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天野友道さんインタビュー

このたび、2008年9月からハーバード大学に通っている天野友道(あまのともみち)さんからお話を伺う機会がありました。以下はそのインタビューに基づくものです。

なぜ米国の大学に行こうと思ったのですか?
そもそも小さい時、幼稚園の年少から小学校3年生までにアメリカのサンノゼに住んでいて、英語に馴染みがあって、海外留学というものに対する心理的なバリアがあまり高くないという下地があったのですが、直接的には、高校2年の時、シンガポールで開催された国際サミットに参加する機会に恵まれたことがきっかけでした。その時、シンガポールの学生は皆、アメリカの大学に行くのが一般的という感じで、「あぁ、アメリカの大学に行くっていう発想もありなんだな」と思いました。それから自分で、いろいろと調べて、面白そうだなと思い、挑戦してみようかと思いました。

天野友道さんインタビュー

そうすると準備をし始めたのは高校2年生からということだったんですね。
そうですね。その頃は周りの皆と同様、国内の有名校に進学しようかなと考えていました。ただその頃、『東大よりハーバードに行こう?!』という本を読んで、あっ、日本人でもそういう人もいるんだなぁと思い、そのように考え始めました。
周囲の反応はどうでしたか?
やはり親の説得が大変でしたね。なぜわざわざアメリカの大学へ行く必要があるんだということで、説得に1年くらいかかりました。アメリカの大学は学費も高いし、生活の安全、言葉、それから大学を卒業してから就職とか大丈夫かなといった点とか、いろいろ指摘されました。でもTOEFLの点数を見せてアメリカの大学の合格圏内の点数もとれたんだよ、今の時点ではまだ何をしたいか、決めかねているとか、いろいろと理由を並べて説得していったら、徐々に理解してくれるようになりました。
アメリカでの生活経験があるご両親で、結構保守的な考え方をされるってちょっと意外な感じがしますよね。
そうですよね。でも逆に海外経験が長いからこそ悪い点も良くわかっていて不安だったのかもしれませんね。例えばアメリカが危ないっていう点とか。
筑波大の付属高校だったら、周りの人が、東大とか一流校を目指す人ばかりで、そうした人の中で、全く別の選択をするというのは、違和感、周りの人の目とか気になりませんでしたか?
そうですね、実はそういう面では恵まれていました。というのは、国立の高校の学校って最近は評判が落ちていて、その理由の一つは、大学受験に役に立つような授業をしないっていうことなんですよ。つまり受験勉強のための勉強じゃなくって、教養のために勉強を教える先生が多いんです。だから逆に僕みたいに東大だけが目標じゃないみたいな考え方に同調してくれる先生がいて、英語科とかをはじめ、ほぼ全員の先生が何らかの形で協力してくれて。そういういう意味では、多分、東大東大ってことばかり目標にしている私立の受験校よりは恵まれていたと思います。
友人はどうでしたか?
そうですね。やはり学年に一人だったので、そんなにまともに相手にしてもらっているって感じじゃなかったですよね、合格するまでは。「へー、そうなんだ」って感じで。確かに周りが受験勉強をしている中、自分だけ英単語の勉強をしてる、って感じで一人だけ違うことをしているという感じはありましたね。勉強量っていう意味では、日本の高校生の方が多いんで、逆に楽してる、ってみられた感じはあったのかもしれませんね。
準備は独学でほとんどされたんですか?
たまたま、運良くAgos Japanで授業料を払わなくてもよい奨学生になれて、英語とかは自分で勉強したんですが、エッセイとかは助かりました。ただ、実際は、日本で学部受験に慣れているところってないので、学校のネィティブの先生とか、昔英語を習っていたネィティブの先生とかに助けてもらいました。 Agosだけだと正直ちょっと心細かったので。
準備に際して一番苦労したのはなんですか?
そうですね。具体的な話でいうとやはり推薦状とかエッセイですかね。エッセイをどういう風に書けばいいのか。書くネタもないし、エッセイが重要なことは解るんですが、どういう点で差別化されるのか、さっぱり検討がつきませんでした。アメリカの高校だったら周りの人がどんな内容で書いているかとか解るんですが、こっちだと全く見当もつかなかったので、精神的にもその点が一番苦労しました。 勉強的に大変なのはやはりSATで、英単語を覚えるとかが大変でした。結局留学生のほとんどは英語圏とかInternational Schoolとかに行っていた人ばかりで。
ちなみにエッセイは結局どのようなネタで書かれたんですか?
たまたま高校の時にプログラミングの本を出版する機会に恵まれたので、出版された本を書店で手に取って、書いた人の気持ちがわかったという、そうですね、本との心の交流といったストーリの話をテーマとして書きました。 ただ僕の学校のルームメートなんて成績も全く良くなかったし、もちろん、僕のように本を出版するとか、数学オリンピックに出たという特殊な経験などなくって、ただ自分の神様に対する強い信念があるということだけを書いて受かった人もいるんですよ。だから大学側もよくわかっていて、特殊なネタを持っている人も沢山いるわけだから、いかにエッセイに自分の情熱を、パッションみたいなものを、表現できているかという点で測っているような気が最近するんですよね。僕の場合も本を書いたことだけを書いてもだめで、それをどういう思いで書いたのかとか、そういうあたりをうまく伝えられないとだめなんじゃないかなと思います。
TOEFLとかSATとかはシンガポールにいった後から本格的に準備し始めたんですか?
そうですね。実際、高2の夏以降に準備し始めたんですが、幸いTOEFLも一回で十分な点数が出たので、その点ではちょっと有利だったかなと思います。ちょうど、TOEFLもCBT(Computer Base Test)からIBT(Internet Base Test)に移る直前で終わらせることができてよかったです。SATはTOEFLと比較にならないくらい大変でしたね。SATは向こうの高校生が受ける試験じゃないですか。外国人が漢検を受けるようなものですよね。数学とかは日本人からすると大丈夫なんですが、不利な点と有利な点があるんですよ。
帰国子女だから英語ではあまり苦労しなかったんじゃないですか?
SATは攻略できる試験なんです。たとえばエッセイとかは、書くコツがあって、それを覚えてうまく攻略すればいいので、ある意味受験と同じです。英語という意味ではむしろ、来てからの方が大変ですね。今でもそうなんですけど、授業で自分の意見をまとめて、議論に参加するというのはなかなか慣れなくって、苦労しました。1年経って漸く要領がつかめてきたかなっていう感じです。実際大したことを言ってる人ばかりじゃないから、思った通りいえばいいんですが、ただ、やはり発言量とかでは見劣りしちゃってるような気がしますし、ディベートとかでは不利になっているような気がします。
それは語学の問題というよりは、そうした訓練を受けていないからってことじゃないですか?
そうですね。ただ、僕の場合、日本人の集まりとかでもあまり発言しないので、どちらかといえば僕個人の性格的な問題なのかも知れません(笑)。
では量じゃなくって、キーとなるところでずばっと発言するような戦略をとった方がいいですね。
いや、まだそのキーとなる発言すら出来ていませんから。ただ、逆にこっちに来てそうした体験を初めてして、自分の性格を改めて把握することができて、良かったと思います。
話は受験の話に戻るんですが、願書は何校くらいに出されたんですか?
10校出しました。
それは何か戦略というか基準というようなものがあったのでしょうか?
親を説得する過程でせっかく受験するんだったら有名校を受けなさいということもあって、アイビーリーグと西海岸の有名校を受験しました。
振り返ってみて、その志望校選びについてどう思われます?
そうですね。今振り返ってみると、Liberal Arts Collegeがあるじゃないですか?日本ではほとんど知られていませんが、その教育の質だとかこうした学校の話を聞けば聞くほど、あぁ、こうした学校も選択肢にいれていればよかったかなぁという気がしましたね。先日も来年ハーバードの1年になる高校生が遊びに来て話したんですけど、そういう学校というのは、何でもやってくれるというか本当にいろいろと提示してくれるんです。一方ここの学校はそうじゃなくって、自分からコンタクトしていけばいろんな人に会えたり、いろいろなリソースにアクセスできたりするんですけど、自分でアプローチしない限り誰も助けてくれないという特徴があるんですよ。リソースが多いのとある程度自分で自由に決められるというのはいいんですけど、能動的じゃなければ何も始まらないという点がこの学校の特異な点ですよね。
結局10校受けられてどのような結果だったんですか?
出した学校の半分くらいに合格することができました。
最終的にハーバードを選んだ理由は?
もちろん、世界的に名前が通っている学校ですし、また、外国人に対しても奨学金を出してくれるという点が大きかったですよね。たとえばイェールとかも奨学金制度があるんですけど、払ってくれる金額が全く違ったので、自動的にここに決めました。
ハーバードのエンダウメント(寄付金)は巨額ですからね。
ええ。余談なんですが、やはりサブプライムの影響か、寄付金の運用パフォーマンスも落ちているのか、いろいろな面で影響は出ていますね。例えば学校が運営しているバスの本数が減るとか、去年までついていた朝食の卵がなくなったとか、徹底していますよね。
キャンパス訪問はしましたか?
結局奨学金で自動的に決めてしまったので、学校訪問はしませんでした。実は小学校3年生くらいにハーバードもスタンフォードも訪問したことがあるんですが、小さい頃だったので、全く興味がありませんでしたね。
アメリカの大学を受験すると決めてから日本の学校を受ける勉強は止めたんですか?
親との兼ね合いという訳でもなく、自分でアメリカの大学に受かる自信がなかったので、日本の大学受験の準備もしていました。
両方の準備をするなんて大変でしたね?
そうですね。ただ、あまり受験科目が多くない大学だとか、アメリカの大学の受験の時期がずれていたのと、高校2年までは準備していたので、そこまで苦労はしなかったかなぁって感じがします。
もともと頭が良かったから苦労しなかったんじゃないですか?
入学してから感じたこととかありますか?
天野友道さんインタビューまぁ、ありきたりなんですけど、やはり多様性ですかね。学校もそれを売りにしていますし。でも、徐々に気づいて来たんですけど、やはり食堂とかでご飯を食べているグループを見ても、アジア人はアジア人で固まっていますし、黒人も黒人でグループになっているし、実はそれほど交流しあっていないんじゃないかなという感じもします。今朝の学生新聞でも、黒人は遺伝子的に白人より劣っているというメールをした人を取り上げた記事がありましたし、前学長のラリー・サマーズも差別的な発言でクビになっちゃいましたし。多様性、多様性といっている割には、実は多様化されていないんじゃないかなという気もしてきました。アメリカという国も課題が多いのかなと思いましたね。白人至上主義者みたいな人もいるし、絵に描いている多様性と現実の多様性とは大きく異なるということを感じますね。日本人は、単一民族で、多様性がないというように悲観視されるようなところもあるんですけど、実際には人間似たような人物とつき合っちゃうわけで、現実は理想とは違うんだなと思いました。
あと、無理してマイノリティを優遇しようとしているようなケースとかあって。例えば、友人で医学部を目指している奴がいるんですけど、彼はアジア人なんですが、自分が黒人だったら、今の成績でも医学部は十分に受かるんだけど、アジア人だからもっと頑張らなきゃいけないなんて、平気で口にするんですよ。逆に黒人だったら、あいつは黒人だから入学できたんだなんていわれる可能性があるので、余計に頑張らなきゃいけないということもあって、どっちにとっても不幸な状態だと思いますね。
人種の壁って大きいんですね。
本とかで人種差別の話とか知ってはいるんですけど、現実はもっともっと複雑ですよね。
授業はどんな感じですか?
現在僕は経済専攻ですけど、マイナーでコンピューターサイエンスを専攻していて、こういう組み合わせが可能なのはやはりアメリカの大学ならではの話で、来てよかったなと思います。
全く毛色の違う専攻ですけど、選考に当たって特別な理由はあったんですか?
経済については、高校の頃からなんとなく経済を専攻したいと思っていたので。コンピューターサイエンスに関しては本も書きましたし、本当はメジャーにするほど好きな科目ではないんですけど、学問的な理解も得たいと思って選びました。また、ちょうどその両方を都合良く選ぶことができて、主専攻、副専攻と選べるところが、こっちの大学のいいところですよね。もともとある一つのことに没頭するというよりある程度広くいろいろなことに興味を持っているタイプなので、そうしたニーズを満たすことができました。 経済については2年生になって、経済の研究のやり方を教えてくれる、自分で経済モデルを作る全員必須のセミナーがあるんですよ。その少人数のセミナーでどのような分野でもかまわないんですけれども、経済のデータの読み方やペーパーの書き方を勉強できる授業があるんです。1年目はミクロとマクロをぼんやりとやるだけで、面白いのかなと思っていたんですが、この授業で多国籍企業と国際化というようなテーマを取り上げて、なぜある企業が中国でなくて日本に進出するのかとか、国際化において政府の役割は大きいのか小さいのかなんてことを研究するんですが、これを勉強し始めて、経済って面白いんだなと思うようになりました。10人くらいの小規模なセミナーで、思ったことはいつでもいえるし、先生との距離も近いですし、ファイナルペーパーも15ページくらいで経済モデルを書いたのですが、これは面白い授業でした。こうしたセミナーもやはりこっちに来てしかできなかったんだろうなと思いました。 また、今中級マクロという授業をとっているんですが、その先生がFRB(連邦準備委員会)に勤務している人が講義してくれて、金融政策の背景や実情を教えてもらえるのは、非常に貴重な経験になりました。
普段は、勉強以外ではどのような生活をしているんですか?
この辺の話をするとちょっと悲しい現実になっちゃうんですが、僕個人がそれほど課外活動とかサークルとかやっていないんですが、やっているのは、企業クラブというクラブでシンガポールの大学と交流したり、ボーゲル先生という有名な先生の家でハーバードとかMITとかの学生が、月に1、2回集まって勉強をするというようなサークルに入っています。あとは有名人が来たらそのレクチャーを聞きにいくとか、天気がいい日に自転車に乗って出かけるとかって感じですかね。
将来どういう方向に進もうとか、方向性は見えてきましたか?あるいはまだ模索中?
まだ模索中です。本来しぼっていかなきゃいけないんでしょうけど、こっちに来て逆に広まってしまって。例えば学会の世界なんか、多分いかないのかなとは思うんですけど。セミナーとか終わって先生とかに話を聞きにいくと、お前はきっとそういうのが好きみたいだから大学院に行ったらどうかと言われると考えちゃいますよね。まぁ、おそらく日本に戻って日本の企業に勤めるかもしれませんね。
アメリカのアカデミアは日本と違ってそれなりに待遇もいいですから検討してみてもいいんじゃないですか?
ええ、ただこっちに来てアカデミアの世界の競争も大変だなと思うようになりました。私の父はサラリーマンで、教授になると人生楽だみたいな感じのことを言っていたので、ちょっと学会をなめてみていたようなところはあったと思うんですが、こっちに来て、それは大きな勘違いだったなと思うようになりました。特に学者になるためには相当強い信念が必要じゃないですか。そういうのが自分には欠けているような気がするんですよね。だから卒業したら仕事に就くのかな、なんて考えています。
総合的に見て、現時点で自分の選択をどう思いますか?
最近は日常のちょっとしたことで、経済のちょっとしたペーパーを読んだり、コンピューターサイエンスの宿題をしている時とか、すごく贅沢な気持ちになることが多くって、こうしたきっかけをくれたシンガポールでの国際サミットへの参加は貴重な体験だったなと思います。あの体験がなければ、こうした選択肢なんて全く思いつかなかったでしょうし、非常に感謝しています。まさにきっかけだと思うんですよ。 僕はAgosでブログを書いていますが、その理由は皆にこうした選択肢もあるんだよということを知ってもらいたいからなんです。こうしたことを日本の学生に伝えるのは僕らのように、こっちで勉強している学生のミッションだと思っています。留学って今まで、いろいろな文化に触発されてポジティブな話ばかり書かれたりすることが多かったと思うんですけど、さっき多様化の話をしたように厳しい現実を見せつけられることもあるし、英語も本当に苦労しています。就職だっておそらく日本の大企業に普通に入るには難しいかもしれない。経済の話も本当は日本語で勉強したらもっと理解が進むだろうと思うこともあります。だから、いい面ばかりじゃなくって、別の面もちゃんと解った上でチャレンジしてもらいたいですよね。
そうですね。今日はどうも有り難うございました。

天野さんは以下のサイトでも大学生活について語っています。
http://www.agos.co.jp/news/report/amano/index.html

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